

BIGLOBEでも大人気のアニメ、コードギアス反逆のルルーシュR2。今までにない斬新な世界観、毎回これでもかと予測できないストーリー展開、耽美なキャラクターたちやスタイリッシュなメカの織り成すスピード感溢れる映像。度肝を抜かれる内容が毎週発信されているのですが、このアニメももういよいよ終盤。一体どう話に決着をつけるのか、行く末も気になりますよね。
同時にこんな物語を作っているのは、一体どういう人たちなのか、という点も非常に興味あるところ。
そこでお仕事DBでは、三週連続でこの「コードギアス」を生み出している方々に、直撃インタビュー。
第1回目は、ストーリー原案・脚本担当として、この物語の世界観を築き上げている方のおひとりにお話を伺いました。
元々子どもの頃からアニメは普通に見ていた、という大河内さん。小学生の時に「機動戦士ガンダム」と出会い、アニメの楽しさを知りました。大学入学後、一度はアニメから離れたものの、バイトで行った出版社の編集部にアニメ好きの人たちが集まっていたせいで再びアニメファンに。
「富士見書房という、ライトノベルを作っている出版社でバイトしてたんです。富士見ファンタジア文庫で、小説家やイラストレーターの担当をしたり、『ドラゴンマガジン』という雑誌を編集したり。新人だったので、漫画やテーブルトークRPG、情報記事、読者コーナーなど、色々とやらせてもらいましたね」
『編集って楽しい』と感じた大河内さんは、そのまま卒業後も富士見書房で働くことに。しかし、三年間ほど働いた後で、フリーのライターへと転身します。
「会社の体制が変わってしまったんです。会社の方針としては理解できるものだったのですが、自分にとっては少し窮屈に感じてしまって。合わなかったというか。それで辞めてしまったんです。
学生時代にも、バイトでゲームや歴史もの等のライターをやっていたし、仕事をするうちに出版社との繋がりも出来ていたので、まあ食べて行けるだろうと。特に何かを目指して辞めたわけではなかったんですよ」
ライターとして独立後は、元々ゲームが好きだったのでゲーム系の記事をメインに担当。その仕事の早さとやる気が認められ、アニメ系の記事の執筆や、ゲームやドラマCDの脚本の依頼が来るようになり、仕事の幅が広がりました。
他にも、友人と組んで『カードゲーム』のデザイナーもしたそうです。この仕事は、アニメなどをカードゲーム化する際そのゲームのルールを考えるもの。当時は『エヴァンゲリオン』や『ガンダム』などのアニメをカードゲームにしたそうです。
さらにまた、ライターの仕事がきっかけで、別の仕事も大河内さんに舞い込んで来ます。それはなんとアニメ小説家。アニメのライターの仕事が切っ掛けで、既存アニメのノベライズ(小説化)の仕事を依頼されたのです。
「仕事で付き合いのあった人が『この子いいよ、書くの上手いし早いよ』って紹介してくれたんです。そうして書いたのが『少女革命ウテナ』の小説でした。それがキッカケになって、『機動戦艦ナデシコ』『機動戦士ガンダム第08MS小隊』と、次の小説仕事にどんどん繋がっていきました」
こうして数々のアニメを小説化するうち、大河内さんにとって大きな出会いが生まれました。
『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』をノベライズ化した時のサンライズ(ガンダムなどを作っているアニメーション制作会社)の担当の方が『∀ガンダム』という作品の脚本を書いてみないか、と誘ってくれたのです。
これが大河内さんにとって、アニメ脚本家への入り口となりました。
大河内さんの仕事歴を振り返ってみると、まさに『わらしべ長者』。一つ一つの仕事がどんどん次に繋がっていった感があります。それはやはり、その時その時の仕事を一所懸命やったから次に繋がっていったんだそうです。
「働いてお金をもらうのって、とても大変なことだと思うんですよ。苦しいこと、辛いこと、嫌なこと、我慢しなければならないこと……色々あるじゃないですか。毎日出勤して、働いているだけでも大したものだと思うのに、それを、さらに一所懸命やるなんて……。僕が一所懸命やれたのは、好きな仕事だったからでしょうね。興味のないこととか、嫌いなことだったら、たぶん頑張れなかったと思います。僕は何度も仕事を変えているけど、やっているのはずっと好きな仕事でした。その部分が一緒だから、僕は今も頑張れているんだと思います」
「最初から脚本家でやれそう、という感触は全然なかったんです、記念受験くらいのつもりで飛び込んだので」
と、アニメの制作現場に飛び込んだ大河内さんは、早々に壁にぶつかります。
脚本を依頼された『∀ガンダム』は、ガンダムシリーズ誕生20周年企画の作品で、あのガンダムシリーズの生みの親、富野由悠季さんが総監督という特別なもの。
「僕は『機動戦士ガンダム』が大好きで、富野さんという監督をリスペクトしていたので、その富野さんの『∀ガンダム』に関われるだけでもすごいことでした。
打ち合わせに行くと、富野さんが目の前で怒ったり、誉めたり、笑ったりしている。もうそれ見ているだけで幸せで、全然仕事っていう気分じゃなかった。
もともと脚本なんてどう書いたらいいかわからなかったし、失敗してもいい記念になるな、という気持ちだったんです」
そうして書いた初めての脚本は、やはり上出来なものではありませんでした。
「見よう見まねで書いてみたんですけど、やっぱり脚本としては水準をクリアしていなくて、全然OKが出なかった。自分の脚本が、どうしてダメなのか分からなくなるくらいに、脚本に関しては素人でしたね。結局、富野監督がすごく直してくれて、ようやく放映されましたけど、敗北感でいっぱいでした」
しかし、そんな大河内さんにもう一度、脚本の依頼が来ました。同じ『∀ガンダム』でのことです。
「もう一度チャンスを貰えたんだから、頑張らないとなと思いました。幸い、次の締め切りまで1か月あったので、その1か月は脚本の勉強ばかりしてました。そうしたら、次の脚本は少しは形になったようで、続けて書かせてもらえるようになったんです」
大河内さんにとって、忘れられない一言があります。『∀ガンダム』の脚本を書いた直後、尊敬する脚本家の方が、大河内さんの脚本を誉めてくれたのです。
その方は、星山博之さんというファーストガンダムや、ムーミンなど数々の名作を手掛けていた大ベテランで『∀ガンダム』にも参加されていました。
その星野さんが何気なく、「キミの脚本はナイーブでとてもいいね」と仰ったんだそう。
「監督からもダメだと言われ、自分でもダメだと思ってたものを、尊敬する人が誉めてくれた。ああ僕のダメな脚本にもいいところがちょっとはあったんだな、と思いました。
その一言が無かったら、今僕は脚本を書いてないかも知れません。真っ暗闇の中に光が差した、みたいな感じでした。それくらい嬉しかった。だから僕は、星山さんに脚本について教えてもらったことは一度もないんですけど、勝手に心の師匠とさせてもらってるんです」
ただ、大河内さんは、この言葉に感謝しつつ、でも、褒められるだけではダメだと言います。
「褒められてばかりだと周りが見えなくなるし、否定されてばかりだと心が挫けてしまうし。褒められることと、否定されることは両方必要だと思うんです。そういう意味では、自分の脚本を初めて褒めてくれたのが星山さんで、初めて否定してくれたのが富野監督。自分がアニメを好きになるキッカケになった「ガンダム」の二人が、二つの初めてをくれたのは、とても光栄に思うし、今でもすごく感謝しています」
脚本家の仕事の忙しさはどんなものかというと、通常の週1放映のTVアニメの場合、週に1本、脚本が必要になります。でも、何人かのローテーションで回すのが普通なので、一人の脚本家が決定稿を出すのは月に一本くらいのペースだとのこと。作品に関する細かい打ち合わせは毎週あるそうです。
「といっても、月に一本だけだと、暮らしていくのは大変ですね。同時に別の作品の脚本を書くとか、同じ作品でも連続して脚本を書くとかして、ニ本以上書けば、それなりに暮らしていけるんじゃないでしょうか」
2クール(半年間)放映のアニメの場合、準備期間も合わせて、脚本家は1年ほど、その作品に関わることになるそうです。しかし、これが、これが原作のない、アニメオリジナル作品ともなるとと、何年も前からその作品の準備をすることも。『コードギアス 反逆のルルーシュ』に関しては、大河内さんは足かけ5年になるそうです。
「オリジナルのアニメの場合、どういう世界観なのか、どんなストーリーなのかを最初に作らないと、人を集めることもできないんです。ロボットを描くのが得意なアニメーター、恋愛モノが得意な演出家など、人によって得意不得意がありますから。もちろん、絵や商品が先にある場合もあります。この絵描きさんのキャラで作りたいとか、この商品を活躍させたいとか。いずれにせよ、原作がないということは、それに変わる核が必要だということです。今、50話(最終回)に向けて話が進んでいますが、第1期(2006年10月〜2007年3月放送)の始まる頃には、大体こんなストーリーで終わる、というところまで決めていましたね」
では脚本の中身は、どういうスタンスで作られているのでしょうか?
小説を書いたことも、編集者として担当したこともある大河内さんは、小説と脚本の違いをこう言います。
「脚本って、それだけでは成立しない仕事なんです。小説や漫画と違って、僕が書いた脚本に、誰かが絵をつけてくれて、演出してくれて、声を入れてくれて……そうして、ようやく形になるんです。あくまでアニメを作るための設計図であって、脚本だけじゃ、普通の人には面白くないですから。
小説が重量挙げやフェンシングなどシングルのスポーツだとすれば、アニメは野球やサッカーなどのチームで戦うものなんです。だから、自分の思い通りにならないこともあるし、逆に絵や声、音楽に助けられることも多い。ただ、総合的に考えると、よくなってることの方が圧倒的に多いと思ってるんです。その作品を作った優れたスタッフの一員であることを誇らしくも思うし。ただ、そういう集団作業が好きになれない人は、脚本家はやめておいた方がいいでしょうね。物語を作るというだけで言えば、小説とか漫画とか、もう少し関わる人間が少ないものの方がいいと思います。
大河内さんの仕事の根本にあるのは『人を楽しませたい』ということ。
「今まで編集者やライターなど、いろいろな仕事をしてきたんですが、結局どの仕事をしていても、お客さんが楽しんでくれるものが作りたい、楽しんでもらえたら最高だ、と思ってきました。編集者だった時も、編集部に読者から送られてくる葉書を見るのが大好きだったし、ゲームデザイナーの時もゲーム大会で審判をしながら実際にユーザーが遊んでくれてるのを見るのが嬉しかった。自分の作ったもので楽しんでもらえるって、とても幸せなことなんですよ。
結局、『人を楽しませたい』といのは、自分の原動力になるもので、これは自分の中で一貫して変わってないものです。アニメ脚本でも、ゲームデザインでも、編集者でも、全ては、人を楽しませるものですから」
今は好きなことを仕事にしているので、働けるだけで幸せだという大河内さん。趣味がそのまま仕事になってしまうのは、ラッキーだと言います。
「人生の中で仕事をしてる時間って、とても多いんですよ。睡眠時間とかを抜いたら、7割くらいは仕事に使う時間なんじゃないかな。自分の人生の7割が、好きなものか、そうじゃないかって、大きく違うと思いませんか? どうせなら、好きなものの方がいいじゃないですか。興味のないジャンルのものって、なかなか頭に入ってこないんですよ。例えば、教科書に書かれた歴史上の人物の名前は覚えられなくても、好きな作品のキャラクターの名前は覚えられるでしょ。さっきも話しましたけど、好きなものの方が頑張れるから、結果的に仕事も上手くいくだろうし。だから、サッカーが好きな人はサッカーやればいいし、音楽好きな人は音楽をやればいい。結果、プロの選手になれなくても、本職のミュージシャンになれなくても、その周辺の仕事――スポーツ用品を作るとか、音楽雑誌の編集をするとか――に就けるだけでも、幸せだと思いますよ」
好きなことが見つからない人には『とりあえず働いてみては』とのエールです。
「僕が編集者になった時は、そのジャンルに興味はあったけど、編集者という仕事を具体的には知らなかったから、その仕事が好きだとも、向いてるとも思わなかったんです。でも、やってみたら、外からでは分からない面白さとか沢山みつけることができたし、その仕事を好きになれた。ライターも、ゲームデザイナーも、脚本家も全部そうなんです。
やってみて好きだったらその仕事を続ければいい。ダメだったら、別の仕事をやってみればいい。そうやって、自分の周りにあるいくつもの選択肢をどんどん試していけば、そのうち自分が本当は何が好きなのか、何が得意なのかって、ゆっくり分かっていきますから。そうやって試行錯誤しながら、「自分の仕事」に辿りつけばいいんじゃないでしょうか」
また、好きなものを探す時にいろいろ迷ったとしても、その経験は全く無駄にならない、と大河内さんは言います。大河内さん自身、今までやって来たいくつかの仕事は、全部今の仕事に役立っているんだそう。
「色々な業界で色々な人と会ったことは、脚本で人を描く上で助けになっているし、会社に勤めていたことも、物事の成り立ちを理解する上で役に立っているし、ゲームデザインをしていたことも、コードギアスの戦略・戦術の描写に生きていると思うし、なんだかんだいって、それまでの経験は活かされていくものなんです。
僕以外でも、アニメの脚本家って、別の職業を経験してからなった人が多いんです。色々な経験を持っていることは、アニメ脚本家として必ず役に立つし、色々な話題をもってるだけでも、友達を作るにしても、女の子とデートするにしても、非常によいキッカケになると思いますよ」
これからの夢は、とお聞きすると、引続き、自分が楽しいな、好きだな、と思える仕事を続けていきたい、とのこと。
「目指したいものとか、辿り着きたい場所があったりはしないんですよ。今まで通り、楽しく仕事ができれば、それだけで十分満足なんです。自分がいいなと思える人と、いいなと思える仕事に出会えれば、それだけで僕は人生ってとても幸せなものだと思います」
仕事を誇りに思い、本当に仕事を楽しんでいる充実した仕事人、大河内さん。これからもきっと、見るものをハラハラ、ドキドキ、ワクワクさせるステキな物語を沢山生み出してくれることでしょう!